働くための「家族ができる」ステップアップ!〜希望を育む、未来への道〜


「我が子が社会で活躍する姿を見たい」。多様な特性を持つお子さんを持つ親御さんにとって、それは 大きな願いである一方で、時に不安や困難を伴う道だと感じられるかもしれません。しかし、適切なス テップを踏み、家族で力を合わせることで、お子さんが自分らしく社会で活躍する未来を切り開くことが できます。今回は、お子さんの「働く」を考える上で、親御さんとご家族が希望を育みながら進めるため の具体的な段階を、「働くための『家族ができる』ステップアップ!」という視点でご紹介します。

ステップ1:お子さんの「得意」と「苦手」を「早期に、客観的に」理解する お子さんの発達の特性や得意なこと、苦手なこと(例:コミュニケーションの難しさ、衝動抑制の困難さな ど)を、幼い頃から客観的な評価(アセスメント)を通じて正確に把握することが、まず最初に行うべき 大切なステップです。
なぜ早期の客観的理解が重要なのか?
早く特性が分かれば、不必要にお子さん自身の自己肯定感を下げることなく、本来持っている力を伸ばすことができます。例えば、3歳の子がコミュニケーション能力では1歳半の発達段階だと客観的に分かれば、先生や周囲の大人もそれに合わせた関わり方ができるようになり、お子さんが「できない」と責められることを防げます。客観的なデータ(知能検査、発達検査、病院での診断など)に基づいた理解は、親御さん自身の納得にもつながります。特に、1歳や2歳の段階から集団適応の難しさが見られる場合でも、客観的な評価に基づく配慮が必要となります。
まず何をすべきか?
発達検査や病院での受診を通じて、客観的なアセスメントを受けることをおすすめします。これにより、 お子さんの発達の「でこぼこ」が可視化され、得意な部分を伸ばし、苦手な部分をサポートする具体的な 方法が見えてきます。
アセスメントの精度を上げることが、適切な支援につながる重要な課題とされています。本人だけでなく、本人を取り巻く環境まで含めたアセスメントが不可欠です。

ステップ2:お子さんの特性を受け入れることの更新を前向きな成長として捉える 親御さんの「一般の進学高校へ行って、最終的に正社員として社会的自立を」という願いと、社会や雇 用の現実にはギャップが生じることがあります。このギャップを埋めるためには、お子さんの特性を受 け入れることの更新というプロセスが繰り返し必要になります。
「更新」とは?
これは一度きりの諦めではなく、幼稚園、小学校、中学校、高校、そして就労といったライフステージの節目ごとに、お子さんの成長や変化、そしてその時点での現実を再認識し、より適切な支援のあり方を探っていく前向きなプロセスです。
例えば、「通常学級が難しい」と認識する時も、それはお子さんにとってより良い環境を見つけるための 「更新」であり、悲観することではありません。
この更新を通じて、「この子は生涯にわたる支援が必要かもしれない」という覚悟が生まれることもあります。これはお子さんが自分らしく生きるために必要な支援を具体的に考えていくための力強い出発点となります。
このプロセスには、継続的なアセスメントと専門家の客観的な視点が不可欠です。

ステップ3:「自分だけの取扱説明書(トリセツ)」を作成し、磨き上げていくお子さんの特性や「でこぼこ」を正確に把握し、まるで「自分だけの取扱説明書」のようにまとめることが非常に有効です。
「トリセツ」の活用法最初は親御さんが中心となって作成し、お子さんの成長や経験によって常に更新していきます。経験によって苦手だったことが嫌ではなくなるなど、お子さんの特性や行動は変化することもあるため、継続的な更新が重要です。
最終的には、お子さん自身が自分の特性を理解し、自分で自分のトリセツを作成し、持ち、活用できるようになることが目標です。これにより、お子さん自身が生きやすさを感じ、自分に必要な合理的配慮を自分で考え、求めることができるようになります。
このトリセツは、周囲の人がお子さんを理解し、適切な関わり方を見つける上での大きな手助けとなりま す。

ステップ4:信頼できる専門家(支援者)と連携する 家族だけで抱え込まず、お子さんと企業、そして親御さんの間に立ち、橋渡し役となってくれる専門家 (支援者)の存在は不可欠です。
どんな支援者を選ぶべきか?
お子さんの要望や不安、企業の要望や本音を双方に分かりやすく伝え、コミュニケーションのギャップを埋める力があるか。
お子さんの感情を汲み取り、企業に「本人はこの仕事を気に入っています」といった情緒を代弁できるか。
「この子にはこう言った方が伝わりやすい」「このような配慮があれば能力を発揮できる」といった具体的 なアドバイスを企業に提供できるか。
単に就職させるだけでなく、その後の安定した就労と、お子さんが主体的に人生を生きるための支援を重視しているか。
自己決定には必ず責任が伴うことを理解し、お子さんの発達段階に応じて適切な責任を負わせながらサポートしてくれるか。支援者のこの理解が不足している場合、本人に不適切な負担がかかる可能性が高まります。
支援者自身の専門性を高める努力をしているか(利用者の行動の背景にある動機や意味を理解しよう としているか)。支援者間での学びや具体的な経験の共有が専門性向上につながります。

ステップ5:「働く」や「自立」の定義を広げ、多様な可能性を受け入れる 「社会的自立」には、様々な形があります。 一般的な概念に縛られず、お子さんにとっての「幸せな働き方」「自分らしい生き方」を見つける視点も 大切です。
視野を広げることの重要性。

例えば、自分で生きていく分だけのお金を稼げなくても、自分のことを自分で抱え、毎日を過ごしていくこ とも立派な自立です。
NHKの「バリバラ」の事例のように、様々な制度やサポートを上手に活用して、自分らしく生活している方もいます。
「一般的な幸せ」や「一般的な自立」という固定観念を一度とっぱらってみることで、お子さんの可能性を より広げ、多様な選択肢を検討できるようになります。

ステップ6:親御さん自身の「性格」的な傾向も理解を深める お子さんの特性理解だけでなく、親御さん自身も「自分はどんな傾向や行動パターンを持っているか」を 認識することは、子育てや支援において非常に役立ちます。
心穏やかに進むために親御さん自身が、物事の捉え方や人との関わり方、得意なことや苦手なことといった、ご自身の性格的な傾向を認識し、「こういうものだ」と受け入れることで、肩の力が抜け、心穏やかにお子さんと向き合えるようになることがあります。
子育ては「戦い」ではなく、「自分の現状を理解すること」が重要であり、それが適切な対応への出発点です。
時には、「諦める(=現実を受け入れ、柔軟に対応する)」ことも、親子双方にとって楽になる一歩となるでしょう。親が自身の傾向を受け入れることで、子どもへの接し方も楽になるという例も示されています。
最後に これらのステップは、決して簡単なことではありませんが、一つひとつ丁寧に取り組むことで、お子さんが社会で「自分らしく働く」ための土台を築き、希望に満ちた未来へと繋がっていくはずです。就職はゴールではなく始まりであり、本人と働くことのギャップをいかに小さくしていくかが重要です。親御さんとお子さんだけで抱え込まず、専門家と共に一歩ずつ進んでいきましょう。